アブストラクト: |
T2K 実験をはじめとした次世代長基線ニュートリノ振動実験は、ニュートリノ振
動の精密測定により、未発見の稀振動モード「ミューニュートリノから電子
ニュートリノへの振動」を探索し、ニュートリノ混合角θ13を決定することを目
指している。その目的ためには、ニュートリノ振動測定の最大のバックグラウン
ドであるニュートリノと原子核の非弾性散乱事象の精密な理解が不可欠である。
しかし、過去に得られているニュートリノと原子核の散乱断面積の測定結果
(70~80年代に泡箱などを用いたも)は20%~100%の誤差がついてお
り、T2K 実験の目指す物理からの要求(~10%)を満たすことができないのが
現状である。
そこで、本実験 SciBooNE の主な目的は、T2K 実験に必要な1GeV付近でのニュー
トリノと原子核の散乱断面積を精密に測定し、ニュートリノ反応のデータベース
を一新することである。この目的のために、長基線ニュートリノ振動実験 K2K
(KEK to Kamioka) の前置検出器として用いられていた SciBar 検出器と呼ばれ
る全感知型飛跡検出器をフェルミ国立加速器研究所(Fermilab)の Booster
Neutrino Beamline に移設して2007年6月から2008年8月までデータ収集を行った。
本講演では、SciBooNE実験の最近の結果を紹介する。
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