理化学研究所

119番、120番元素への挑戦

核図表を埋めていくことで、見えてくる世界がある。

未報告である119番、120番を合成するには、キュリウム(Cm 原子番号96)やカリホルニウム(Cf 原子番号98)などを標的にし、チタン(Ti 原子番号22)やバナジウム(V 原子番号23)、クロム(Cr 原子番号24)のビームが必要だと考えています。理研では既に119番元素以降の合成に供するGARIS-Ⅱも開発済みで、今後理研・九大をコアとした国際共同研究のもと、119番以降の新元素探索に挑戦していきます。

さて、超重元素の先に「安定の島」と呼ばれる領域があります。超重元素は一般に重くなるほど寿命が短くなるのですが、安定の島領域の原子核の寿命は、量子力学的な効果によって極めて長くなると予想されているのです。寿命は長くとも「安定の島」原子核の生成は大変難しく、138億年にわたる宇宙の歴史の中でも作られたことがないかもしれません。当然、この安定の島へ到達することは人類の大きな挑戦の1つです。しかし現在の知見・技術では安定の島へ到達する道筋すら明らかではないのです。確実に言えるのは、従来の超重元素生成に用いられてきた安定核同士の融合反応では到達不可能、ということだけです。理研仁科加速器研究センターは、RIビームファクトリー(RIBF)の大強度化を行い不安定な原子核の生成・分離能力を大幅に向上させ、安定の島に至る道筋を見つけ出すとともに、原子核の地図とも言える核図表上の未踏の新領域を開拓することを目指します。

このRIBF大強度化は基礎研究のみならず、応用研究にも大いに貢献します。例えば、我々は既に調査・診断用のラジオアイソトープ(RI)を製造していますが、大強度化により、次世代の放射性医薬品としてがんの治療・診断薬で期待されている有用RIを大量に製造することが可能になります。こうした大強度ビームを用いたRI研究の重要性は世界的に認知されており、現RIBFを超えるような欧米の大強度加速器計画も始動しようとしています。今後予想される激しい研究競争の中、理研のRIBFが世界を先導できるよう挑戦し続けます。