研究紹介

応用研究

重イオンビーム育種

 

日本発の重イオンビーム育種法の発明


ビーム照射量と変異率の関係


使用する放射線

重イオンビーム照射による変異の誘発は、エックス線やガンマ線による場合と異なることが分かっています。この方法はDNA二本鎖切断によってDNA欠失型変異を高率に生じることが、動物細胞やマウスを用いた研究により、明らかにされていました。私たちは植物に重イオンビームを照射し、きわめて有望な育種技術をなり得ることを見いだしました。この発明は理研と放医研の共同研究として実施された重イオンビームがん治療法の開発がヒントとなっています。

1996年より民間企業や農業試験場などと共同でパイロット研究を実施したところ、ひとつの形質のみに変異が生じ、変異形質が安定している例が多数得られました。これらの変異個体そのものは新品種や交配親に成り得るため、通常10年と言われる育種年限の大幅な短縮の可能性を示しました。

重イオンビーム育種の方法

 

重イオンビーム育種による花き園芸市場の開拓と食料・環境問題解決への貢献

1998年に照射した植物材料から2001年秋に新色ダリア品種が試験販売され、2002年春には不稔化バーベナ品種が世界初のイオンビーム育種の成果として市販されました。品種改良目的の加速器ユーザーは現在82団体に増加し、また国際的にも注目を集め、韓国から野菜・稲・小麦、オーストラリアから小麦・稲、南アフリカから穀類を中心に照射依頼が寄せられています。重イオンビーム育種技術により育種年限を短縮して新品種を育成できる経済効果は大きく、さらに“日本ブランド“の新品種を紹介できることはこの分野におけるわが国のリーダーリップを確固たるものとしています。また、環境・生態系の劣化を憂慮する一般社会に対しても、荒地緑化植物、海水塩耐性植物、組換え植物の花粉飛散を防ぐための不稔性植物、光合成強化植物などの作出などを通じて貢献できると期待されます。

 

新種のサクラ

この技術により新種のサクラの開発にも成功しました。JFC石井農場と共同開発による成果です。
淡い黄色の花を咲かせる「仁科蔵王」と、四季咲きのサクラ「仁科乙女」です。

仁科蔵王は、緑がかった花を咲かせる桜「御衣黄(ぎょいこう)」に理研の加速器「リングサイクロトロン」から発生する重イオンビームを照射して突然変異を誘発させてつくり出したもので、淡黄色の花を咲かせます。その花は、黄色ピンクのふちに明黄緑色の筋が入り、咲き始める頃には淡黄緑白色で、終わりの頃に淡黄ピンクが広がり、美しい色の変化が見られます。通常、開花時期は4月中旬頃で、約2週間と長期間にわたり花が楽しめます。花の形は半八重で、4~5センチ程度の大きさをしており、元親の御衣黄と違った新品種となりました。
「仁科」は理研の加速器の父・仁科芳雄博士、「蔵王」は共同研究者のJFC石井農場が山形の育種家であることに由来しています。2001年にノーベル化学賞を受賞した理研の野依良治理事長が命名しました。また、仁科芳雄博士生誕の地である岡山県里庄町に苗木3本を、和光市に5本を寄贈しました。

仁科乙女は、「山形13系敬翁(けいおう)桜」に理研の加速器「リングサイクロトロン」から発生する重イオンビームを照射して突然変異を誘発させてつくり出したもので、ピンク色の一重のかれんな花を咲かせます。
一般に日本のサクラは、夏につくられた花芽(はなめ)が晩秋に休眠します。花を咲かせるには、冬の寒さによって休眠を打破することが必要で、早春に花芽が生長し、開花に至ります。元品種である敬翁桜は、8℃以下1000時間程度の低温が、休眠打破に必要です。ところが、仁科乙女は休眠打破に低温を必要としません。つまり、低温にさらされなくても花を咲かせることができることが最大の特徴です。
野外栽培では、開花時期は4~7月、9~11月の二季咲きですが、温室で栽培すると個体ごとにさまざまな時期に開花し、連続して花を咲かせることができます。ただ、気温が30℃を超える真夏と5℃以下になる真冬には、花が咲きません。また、寒さにさらしたり、葉を落とすと、一斉に開花するようになります。一斉開花のときの花の数は、元品種である敬翁桜の3倍で、花が美しく咲く期間は敬翁桜の2週間に対して2倍の4週間に延びました。
「乙女」はピンク色の可憐な花に由来し、「仁科乙女」と命名されました。

重イオンサクラの作り方

関連する研究室

研究室名 役職 代表者
応用研究開発室 室長 阿部 知子
生物照射チーム チームリーダー 阿部 知子
RI応用チーム チームリーダー 羽場 宏光

 

 

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