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新元素の発見

113番元素・ニホニウムの発見

これまで確認されている元素より、さらに重い113番元素の発見に成功し、「ニホニウム」命名しました。。世界最高のビーム強度を有する理研重イオン線形加速器(RILAC)とガス封入型の反跳分離器(GARIS)を使った研究成果 です。
本研究の目的は原子番号113の原子核を合成するという単純なものですが、その困難は、目的とする原子核の生成確率が極端に小さいこと、生成に最適なエネルギーを的確に予測し精度良く照射することです。そのためには、標的となる原子核とビームの原子核を多数回衝突させる必要があります。
RILACによって加速された亜鉛イオンをビスマスに衝突させました。80日間にもおよぶ連続照射実験を続け、1個の113番元素が合成されました。

原子核衝突実験の模式図

 

新元素の発見は、目的とする原子核のできる確率が極端に小さいためとても困難です。世界中でその発見を競っています。
113番元素の場合、原子核同士を100兆回※も衝突させる必要がありました。

※1個の113番元素を生成するのに必要な平均衝突回数

元素発見に貢献した装置群

RILACとGARISのCG図上記RILAC、GARISに加え多くの装置群のおかげでニホニウム発見に貢献しました。
GARISは高強度の入射粒子や目的外の生成粒子を排除して、目的粒子のみを検出部に導きます。検出器はα線や核分裂片のエネルギーだけでなく、放出位置を同定して、1つの原子核から反応が起きたことを確認しています。

RILACの前段に、新たにECRイオン源と呼ばれる強力なビーム源の開発に成功したことと、ECRイオン源とリニアックの間に可変周波数RFQと呼ばれる新方式の前段加速器の開発に成功したこととが、大強度ビームの安定供給に決定的な役割を果たしました。
この成功の鍵を担う入射器、RILACの高度化。そして研究者自ら設計する優れた装置。これらがあいまって得られた成果は周期表に名を残すことができるかもしれないところまできました。

装置群ギャラリー

RILACのサムネイル写真 GARISのサムネイル写真 ECRイオン源のサムネイル写真 RFQのサムネイル写真

元素発見のこれから

理化学研究所RIビームファクトリーで生成された113番元素が2015年大晦日、国際的に新元素として認定されました。元素周期表に日本人の手で新たな元素が加わったことになります。かつて、新しい元素の発見は新しい物質科学の始まりを意味し、新物質はさまざまに利用され、人々の生活を豊かにしてきました。今回発見された113番元素は10年近い年月をかけ、困難な中3原子を合成・発見しました。また寿命も約1000分の2秒とみじかく、瞬く間にほかの元素へと壊変してゆきます。新元素は現在のところ、人々の生活に直接かかわることはないと考えられます。しかし元素は世界の構成要素であり、これを探求することは、人類に化学の基礎を与え、原子核の安定性についてより深い理解を与えます。物質の存在にかかわる基礎研究の深化は、未来の科学、ひいては科学技術と社会の発展に大きな貢献をすることは間違いありません。

 

関連する研究室

研究室名 役職 代表者
超重元素研究開発部 部長 森田 浩介
超重元素合成研究チーム チームリーダー 羽場 宏光
超重元素分析装置開発チーム チームリーダー 森本 幸司