研究紹介
HOME > 研究紹介 > 加速器の高度化計画

加速器の高度化計画

これまでのRIビームファクトリーでの成果

RIビームファクトリー(RIBF)は、重イオン科学の国際拠点として世界最高強度の重イオンビームを用いた実験研究により世界の原子核物理学を牽引してきました。その代表的成果は、ニホニウム合成、約200個の新同位元素生成、新魔法数の発見、宇宙における鉄より重い元素の起源にかかわるr過程元素合成など枚挙にいとまがありません。元素合成研究では、r過程に関わる原子核を加速器を用いて世界で初めて大量生産し、核データに基づかない仮説駆動科学だったr過程研究を実データに立脚したデータ駆動科学に高めたことは大変大きな意義があります。また最近では、放射性廃棄物の減容と資源化を目指した核反応データ取得(プレスリリース)に着手し、その成果に対して21世紀発明賞を授与される(プレスリリース)など社会的にも高く評価されています。

RIビームファクトリー高度化計画

仁科加速器科学研究センターは、現在の加速器施設をアップグレードして、重イオンビーム強度を桁違いに増強する計画である「RIビームファクトリー高度化計画」を立案し、その実現に向けて検討を進めています。高度化計画では、RIビームファクトリーの重イオンビーム強度を30倍増強することにより、より多くの新同位元素生成へとその到達領域を広げ、原子核を自由自在に操る「元素変換科学」として大きく発展させることを目指します。具体的な研究内容としては、119、120番元素合成による人類未踏の周期表の第8周期への挑戦、金・白金を含むr過程元素合成を特長づける第3ピークへ研究展開が中心テーマです。さらには、放射性廃棄物の減容につながる新しい核反応データ取得を進めていきます。更に、新たに中性子過剰RIビームを用いた二次反応による研究に着手し、現在未踏の中性子過剰超ウラン元素を生成し、新たな研究を開始するとともに、安定原子核の島へ至る道筋を明らかにしていくことを目指しています。

現施設から高度化計画への施設変更模式図。荷電変換リングを増設し、ビーム強度は30倍になる。

一部はすでに進行中

高度化計画の一部である線形加速器の超伝導化は、先行して実施しており、2020年中にエネルギーと強度を増強した重イオンビームによる119番元素の合成が開始されることとなっています。今後行う建設計画では、ビームリサイクルという新しいアイデアを導入することにより重イオンビームの有効化活用するための荷電変換リングを世界で初めて開発します。これにより、現在の荷電変換器で失われているビームを再利用し、サイクロトロンの改良と合わせてビーム強度を30倍にする計画です。

荷電変換リングのイメージCG
荷電変換リング
本計画のキーデバイス。ビームリサイクル技術により荷電変換効率を2.5〜4倍にする。

RIビームファクトリーは、80年に及ぶ日本の加速器開発の結果花開いた世界に誇る研究基盤です。本高度化計画ではRIビームファクトリーを更に強化し、世界最高性能の重イオンビームにより新しい元素変換科学を切り拓いていきます。