理化学研究所 仁科加速器科学研究センター
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仁科加速器科学研究センター(仁科センター)の紹介

仁科センターは、日本における「原子核物理学の父」である仁科芳雄博士の名を冠した研究センターです。世界最高性能を誇る「RIビームファクトリー」と多くの研究者を擁し、「元素は宇宙でどうつくられたのか?」、「人類は元素を自在に変換できるのか?」という二つの大きな問いに挑戦しています。これらの研究成果を社会に還元して、人類社会の抱える環境・エネルギー・資源の問題を解決することを目指しています。

RIビームファクトリーとは

仁科センター

RIBFの全体像

RIビームファクトリー(RIBF)は、仁科センターの地下にあります。RI(放射性同位元素、不安定核とも言う)をビームとして取り出し、工場(ファクトリー)のように大量生産する施設です。

RIBFでは、イオン源で生成された低速の原子核のビームをいくつもの線形加速器やサイクロトロンを使って加速します。水素からウランまでの原子核を、最大で光速の70%まで加速することができます。この原子核を他の原子核に衝突させると、多種多様なRI(不安定核)が誕生します。これらのRI(不安定核)を、原子番号、電荷、質量、運動量によって分けるのが超伝導RIビーム生成分離装置(BigRIPS)です。BigRIPSの先には、さまざまな実験装置が取り付けられています。これらの装置は、研究チームがそれぞれの研究目的に応じて開発し、実験を行っています。

仁科センターの研究

今から138億年前に私たちの宇宙が生まれたとき、そこに存在した元素は水素とヘリウムの2種類だけでした。その後、長い年月をかけて恒星の中で徐々に重い元素がつくられ、それらの元素から私たちの地球も、私たちの体もつくられています。仁科センターは、現在確認されている118種類の元素の成り立ちを突きとめること、すなわち「元素は宇宙でどうつくられたのか?」という問いに挑戦しています。

一方、RIBFは陽子数と中性子数のさまざまな組み合わせの原子核をつくるのが得意です。その中には、例えばがん治療に使えるRI(不安定核)もあります。これは、元素を自在に変換することで得られた研究成果の一つです。RIBFがつくり出せるすべてのRI(不安定核)の性質を調べることで、人類にとって有用なモノを発見し利用しながら、究極的には「人類は元素を自在に変換できるのか?」という問いにも挑んでいます。

核図表

核図表。原子核の種類は、陽子の数(縦軸)と中性子の数(横軸)の組み合わせにより決まる。この図では、小さな四角の1個1個が1種類の原子核を表す。安定な原子核(黒い四角)は300種類に届かない。RI(不安定核)は3000種類ほど見つかっている(オレンジの四角)。その多くは加速器でつくり出されたもので、仁科センターも種類を増やすのに貢献している(青い四角)。新元素ニホニウムも、その一つである。寿命が1ナノ秒以上のRI(不安定核)はおよそ10000種類存在すると考えられているが、まだ発見されていないものも多い(薄緑の四角)。「r過程」とは、宇宙の歴史の中で起きた超新星爆発や中性子星合体など、ごく短時間で重い元素がつくられたときの過程として理論的に提案されているもの。

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